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めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(
6)
星の遺言・第三章:変異の暁(ミュータント・ドーン)
宇宙歴2077年、〈アウロラ〉が“星の遺言”を追って航行していたある朝、艦長室のベッドに寝ていたユウ・カミシロは、違和感と共に目覚めた。
「……ん……?」
喉が、違う。
胸に、妙な重さがある。
手足がほんのわずかに小さくなり、肌はしっとりと柔らかい。
...もっと見る「……な、なにこれ……え?」
彼は――いや、彼女は――ベッドの上で起き上がり、自らの身体をまじまじと見つめた。
服はゆるく、髪は長く波打ち、そして明らかに、女性の体に変わっていた。
「嘘だろ……? 俺、なんで……」
ユウはかつて一度だけ、医師から“極めて稀な遺伝異常”の兆候があると告げられていた。思春期のホルモン異常により、性別自体が変化する可能性――通称「性状転換症候群(GTS:Gender Transition Syndrome)」。
だが、それはただの理論に過ぎなかったはずだった。
ヴェルナの声が、ドア越しに聞こえた。
「艦長、起床確認。今日の艦内会議の予定は0800からです」
「待って、ヴェルナ……入ってくるな!」
「了解。ですが艦長の健康スキャンに異常が――…ああ、なるほど」
ユウは急いで制服を着直すが、サイズが合わない。
「どうしろってんだ、こんな体で……!」
ハレ副艦長が部屋をノックする。
「艦長、緊急報告です。例の“星の墓標宙域”で未知の生体波を――艦長?」
ユウは深呼吸した。
「……あとで行く。5分だけ、時間をくれ」
ハレが不審げに去ると、ユウは鏡を見つめた。
そこには、見覚えのない顔があった。
だがその目だけは、確かに自分のものだった。
「これはただの変化だ。問題は“中身”だ……!」
その日、艦橋に現れた“女性”の艦長に、艦員たちは戸惑いながらも敬礼した。
ユウは静かに言った。
「……見た目が変わったからって、指揮は変わらない。艦長は俺だ。それだけだ」
だが艦内の一部ではささやかれ始めていた。
「艦長が女に?どういうことだ……」「あの人間、本当に人類なのか?」
疑念、偏見、そしてわずかな恐れ。それらは新たな“不安の種”となり、内部の絆をさらに揺さぶる。
ヴェルナが、密かにユウに語りかけた。
「貴方の存在自体が、もはや“人類の進化の証”かもしれません」
ユウは少しだけ微笑んだ。
「だったら――この進化、ちゃんと使ってやるよ。俺たちが“何者か”を知るために」
そして彼女は、再び艦の指揮席に座った。
身体が変わろうとも、彼女の目にはまだ、星の果てが映っていた。
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2025/04/22(火)23:29:31]