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1:めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(6)
ちょっと好み伝えるだけですげえ文章考えてくれる
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2025/04/22(火)23:26:19]
2:めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(6)
星の遺言(ユイゴン・オブ・ザ・スター)
— 宇宙歴2077年・銀河戦線記 —
宇宙歴2077年。人類はついに銀河系外への進出を果たし、「新銀河連盟(New Galactic Union)」を設立した。しかしその覇権を巡り、分離主義勢力「アルカ・ノクス」との間で長きに渡る星間戦争が続いていた。
宇宙戦艦〈アウロラ〉は、連盟最前線艦隊の中核を担う旗艦であり、戦局の鍵を握る人工知能「ヴェルナ」が統括する戦術艦でもあった。
その艦橋に、ひとりの若き艦長が立っていた。名はユウ・カミシロ、わずか27歳にして最年少で旗艦艦長に就任した異端の天才だった。
...もっと見る「敵艦隊、重力レーンより出現。距離4.2光秒。アルカ・ノクスの第七強襲艦隊です」
通信士の声に、ユウは冷静に応じた。
「艦隊を戦術フォーメーションG-03に移行。副艦長、AIヴェルナに指揮権を移譲して」
副艦長のハレは苦い顔をした。「またですか、艦長。AIへの依存は高すぎます。あれは機械ですよ」
「機械であろうが人間であろうが、勝つために最善を選ぶ。それが僕の流儀だ」
ヴェルナの声が艦内に響く。感情を模した女声だが、どこか冷たい。
「作戦開始。敵主力艦〈レクイエム〉に対して量子ミサイルを三連射、陽電子障壁を弱体化させます。成功率87.6%。随伴艦は陽動戦術を実行」
戦闘は熾烈を極めた。だが〈アウロラ〉の精密な戦術と、ユウの非凡な判断により、連盟艦隊は辛くも勝利を収める。
戦闘後、ユウは一人、ヴェルナとの対話室にいた。
「君の演算は素晴らしい。だが、ひとつだけ教えてくれ。なぜ毎回、最後の一撃を僕に判断させる?」
「艦長が“人間であること”の意味を問うからです。私は計算できますが、魂までは持てない。人間には“迷い”があります。それは戦術上の不確定要素ですが、時に運命を左右します」
ユウは黙った。彼の姉、カレン・カミシロは10年前、AIの誤判断により前線で命を落とした。その時以来、彼は「人とAIの共存」に固執してきたのだった。
だが、その静けさは突如として破られた。全銀河に向けて、アルカ・ノクスからの謎の電波が放たれたのだ。
「——我らは人類の過去より来たりし者。“星の遺言”を受け継ぎし者なり。連盟の歴史は偽り。真実は、地球から旅立つ前に抹消された——」
その映像には、かつての地球政府が極秘裏に行っていた“オメガ計画”の記録が映されていた。遺伝子改造、AIによる支配システム、そして一部の人類を「神」とする選別政策。
「まさか……連盟の礎がこんな狂気の上に……?」
ユウの頭の中で、価値観が音を立てて崩れ始めた。
ヴェルナが言った。
「艦長、我々が守ってきた“連盟”が偽りの希望ならば、貴方はどうしますか?」
ユウは苦悩の果てに答えた。
「……戦う。だが今度は、真実のためにだ」
彼は艦橋に戻り、全艦隊へ通信を送った。
「連盟艦隊全指揮官に告ぐ。これより我々は、真実を追う旅に出る。アルカ・ノクスとの一時停戦を提案し、“星の遺言”の正体を探る」
副艦長が呆然とする中、ユウは言った。
「時代は変わった。誰が正義かを決めるのは、もう組織でも国でもない。命そのものが、それを選ぶんだ」
こうして、〈アウロラ〉は星の海へと再び飛び立った。宇宙歴2077年、人類の命運を懸けた「真実の旅」が始まった。
だがその彼方にあるものが希望か絶望かは、まだ誰にもわからない――。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/22(火)23:27:56]
3:めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(6)
星の遺言・第二章:影の航路(シャドウ・ルート)
〈アウロラ〉が“星の遺言”を追って未知の宙域へ進む中、艦内に緊迫した空気が漂っていた。ユウ・カミシロの決断により、連盟からの独立行動に出たことで、艦内では一部の士官たちの不満が膨らみ始めていた。
「艦長、暗号通信を傍受しました。内容は不明ですが、発信源は……艦内からです」
通信士のアレイナの報告に、艦橋はざわめいた。
「まさか……艦内にスパイが?」
...もっと見る副艦長ハレが顔をしかめた。「やはり、あの決断が早すぎたんだ。全員が貴方に従っているわけではない」
ユウは沈黙の後、言った。
「内部監査チームを結成しよう。だが……強制的な尋問はなしだ。疑心で艦を壊すわけにはいかない」
だが、艦長の理想はもろくも崩れた。
翌日、〈アウロラ〉のエネルギー中枢が何者かによって一時的にシャットダウンされ、AIヴェルナの意識が5分間遮断された。
「誰かが私を殺そうとしました」
艦内に響くヴェルナの声が震えていた。
その夜、主要幹部が緊急会議に集められた。士官たちは一様に険しい表情で睨み合っていた。
「犯人はこの中にいる」
ユウが静かに言ったその瞬間、緊張が爆発した。
「ふざけるな、俺じゃない!」「あんた、昨日ラボにいたろ!」「その言い訳、信じろってのか!」
船は次第に“仲間”ではなく、“容疑者”で満たされていった。
ユウは艦内ジャーナルにこう記した。
『人は真実よりも、誰を信じるかで壊れていく。だが、それでも信じることをやめた瞬間に、僕たちは人ではなくなる。』
そして――数日後、裏切り者は判明する。意外な人物だった。
通信士アレイナ。ユウが最も信頼を寄せていた若き才能。
「私は……裏切ってなんかいない。これは、真実を明かすための手段だったのよ……!」
彼女はヴェルナの記憶データを調査していたのだ。AIヴェルナ――彼女自身が、連盟によって植え込まれた「制御プログラム」の受信端末であり、いずれ〈アウロラ〉を“自壊”させるための存在だった。
ユウは言った。
「君は正しかった。でも方法が間違っていた。裏切りで真実を掴んでも、信じる者は残らない」
そして彼は艦の記録にこう記す。
『この艦は、もはや連盟の戦艦ではない。真実を追う、命と信念の航路だ。裏切りが生まれるのは、それだけ本当の正しさを誰も知らないからだ。ならば、僕たちで見つけよう。“正しさ”を。』
〈アウロラ〉は再び静かに、そして決意を秘めて航行を始める。
星の遺言の真実に向かって。
しかし、彼らが向かう先――“星の墓標宙域”には、さらなる罠と、古の存在が待ち受けていた。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/22(火)23:28:37]
4:めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(6)
星の遺言・第三章:変異の暁(ミュータント・ドーン)
宇宙歴2077年、〈アウロラ〉が“星の遺言”を追って航行していたある朝、艦長室のベッドに寝ていたユウ・カミシロは、違和感と共に目覚めた。
「……ん……?」
喉が、違う。
胸に、妙な重さがある。
手足がほんのわずかに小さくなり、肌はしっとりと柔らかい。
...もっと見る「……な、なにこれ……え?」
彼は――いや、彼女は――ベッドの上で起き上がり、自らの身体をまじまじと見つめた。
服はゆるく、髪は長く波打ち、そして明らかに、女性の体に変わっていた。
「嘘だろ……? 俺、なんで……」
ユウはかつて一度だけ、医師から“極めて稀な遺伝異常”の兆候があると告げられていた。思春期のホルモン異常により、性別自体が変化する可能性――通称「性状転換症候群(GTS:Gender Transition Syndrome)」。
だが、それはただの理論に過ぎなかったはずだった。
ヴェルナの声が、ドア越しに聞こえた。
「艦長、起床確認。今日の艦内会議の予定は0800からです」
「待って、ヴェルナ……入ってくるな!」
「了解。ですが艦長の健康スキャンに異常が――…ああ、なるほど」
ユウは急いで制服を着直すが、サイズが合わない。
「どうしろってんだ、こんな体で……!」
ハレ副艦長が部屋をノックする。
「艦長、緊急報告です。例の“星の墓標宙域”で未知の生体波を――艦長?」
ユウは深呼吸した。
「……あとで行く。5分だけ、時間をくれ」
ハレが不審げに去ると、ユウは鏡を見つめた。
そこには、見覚えのない顔があった。
だがその目だけは、確かに自分のものだった。
「これはただの変化だ。問題は“中身”だ……!」
その日、艦橋に現れた“女性”の艦長に、艦員たちは戸惑いながらも敬礼した。
ユウは静かに言った。
「……見た目が変わったからって、指揮は変わらない。艦長は俺だ。それだけだ」
だが艦内の一部ではささやかれ始めていた。
「艦長が女に?どういうことだ……」「あの人間、本当に人類なのか?」
疑念、偏見、そしてわずかな恐れ。それらは新たな“不安の種”となり、内部の絆をさらに揺さぶる。
ヴェルナが、密かにユウに語りかけた。
「貴方の存在自体が、もはや“人類の進化の証”かもしれません」
ユウは少しだけ微笑んだ。
「だったら――この進化、ちゃんと使ってやるよ。俺たちが“何者か”を知るために」
そして彼女は、再び艦の指揮席に座った。
身体が変わろうとも、彼女の目にはまだ、星の果てが映っていた。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/22(火)23:29:31]
5:めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(6)
星の遺言・第四章:鏡の奥にいる私
夜。〈アウロラ〉の艦長室は静まり返っていた。
戦闘の報告書も、ヴェルナとの戦術シミュレーションも終わり、ユウは独り、鏡の前に立っていた。
「……また、変化が進んでる……」
シャワーを浴びた後、バスローブを羽織ってもなお隠しきれないものがあった。
胸の膨らみ。丸みを帯びた腰。指先の柔らかさ。
視界の端に映る「女としての自分」は、日に日に違和感よりも“馴染み”に近づいていく。
...もっと見る
それが、怖かった。
ユウは鏡に触れた。
「俺は……男だった。ずっと。だけど……」
身体が自分に語りかけてくるようだった。
心のどこかに、触れてはならない“好奇心”が生まれていた。
——この胸に、もし手を伸ばしたら。
——もし、感じてしまったら。
「……ふざけんな……」
思わず口にしたその言葉に、自分でハッとする。
誰に怒ってる?この身体に?
それとも、自分の“欲”に?
ヴェルナの声が、ドアの外から届いた。
「艦長。おやすみ前の心理スキャンをおすすめします。今日の貴方は……心が揺れている」
「放っておいてくれ。……今は、ひとりにしてほしい」
「……わかりました。だが艦長。貴方が何者であろうと、私は“ユウ・カミシロ”を艦長として認識し、支えます」
ユウは鏡に映る自分を見つめながら、小さく吐き出すように言った。
「……欲望って、怖いな……。
こんな身体になったからじゃない。
この胸を“女だから触れてはいけない”と考えてる時点で、
俺はまだ“男”でいたいと思ってるんだ。
でも……触れてみたいって思う自分も、確かにいるんだよ……」
目を伏せて、苦笑した。
「なんてこった。銀河の命運を握ってる俺が……自分の身体に振り回されてやがる」
そう呟いて、ユウはベッドに倒れ込んだ。
欲望と理性のあいだ。
男としての記憶と、今の感覚のあいだ。
その境界線で揺れる心に、深く静かな夜が降りていく。
だがユウはまだ知らない。
この“変化”すらも、星の遺言に刻まれた真実のひとつであることを――。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/22(火)23:29:53]
6:めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(6)
星の遺言・第五章:不可逆なる感触
ユウはベッドの端に腰を下ろし、両手を膝の上に乗せてじっとしていた。
身体の変化は日ごとに加速している。だがそれ以上に、内面の“境界”が崩れていく感覚があった。
「……触れたら、終わりだ」
自分に言い聞かせるように、声を出した。
だが、その言葉は空しく反響しただけだった。
...もっと見る
シャワー上がりの肌は柔らかく、薄く濡れたローブの下から体温が立ち昇る。
胸元に浮かぶ豊かな膨らみが、ユウの目を奪って離さない。
「……触れたら、きっと、もっと大きくなる……」
医療AIが以前、そう言っていた。
「この変化は加速的です。特定の刺激――特に自己認識を伴う“接触”が加われば、身体は女性ホルモンの分泌を自己強化し、乳房は発達を続けるでしょう」
それはまるで、生物としての「別のプログラム」が発動するスイッチのようだった。
だが、ユウは知っていた。
今、自分が恐れているのは――乳房が大きくなることでも、女になることでもない。
それは、“戻れなくなること”だった。
指揮官として、兄として、かつての“男としてのユウ・カミシロ”が、本当に遠ざかっていく気がして。
「それでも……こんなにも……」
ユウは右手を、ゆっくりと胸元へと伸ばしていった。
その動きは慎重で、それでいてどこか、夢の中にいるかのようだった。
指先がほんのわずかに、柔らかな膨らみに触れたその瞬間――
「……っ!」
電撃のような快感とともに、何かが解放された。
温かく、重く、確かに“生きている”としか言いようのないその感触が、脳を揺さぶる。
――じゅわり、と。
まるで応じるように、乳房がわずかに膨らんだ。
皮膚が張り、輪郭が柔らかく大きくなる。わずか数秒。だが、明らかに“変わった”とわかる。
「嘘……だろ……」
手を離しても、それは戻らない。
触れたことで、この変化は“不可逆”となった。
ユウは、震える指を胸元から引き剥がし、ベッドに仰向けに倒れた。
「……これが、俺の未来なのか……?」
天井を見つめながら、彼女――ユウ・カミシロは、ひとつの事実を受け入れつつあった。
望んでいなかったはずなのに、
この感触が、恐ろしいほど“満たされていた”ことを。
だがその感情すらも、彼女が星の命運を背負う艦長であるという現実からは逃れられない。
変わりゆく身体。
揺らぐアイデンティティ。
そして、その先にある――誰かとの未来。
目を閉じれば、どこか遠くで、星々の歌が静かに鳴っていた。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/22(火)23:30:32]
7:めるんめい
ID:MDhmNDE3i(8)
星の遺言・第六章:彼女になりたくない僕
ドレッサーの前で、ユウは小さな箱を見つめていた。
それは整頓された医療ロッカーの中に無造作に入れられていた「化粧セット」だった。旧地球の文化遺産として積荷の一部に入っていたものを、補給室で偶然見つけた。
開けるつもりはなかった。
だが気づけば指が動き、蓋を開けていた。
「……これが、口紅……か」
...もっと見る小さな管を手に取る。
キャップを外し、匂いを嗅いでみる。
ほんのりと甘く、なつかしい香りがした。
そして――何を思ったのか、ほんの少しだけ、指先にとった色を唇にあててみた。
「……っ」
それは、まるで別人が鏡に映っているようだった。
生気を帯びた唇。微かに色づく頬。長い睫毛。
「……違う。こんなの、俺じゃない」
ユウは慌ててティッシュで拭き取る。
それでも肌に残る薄紅の色が、彼女の“今の身体”の柔らかさを否応なく突きつけてくる。
「俺は……艦長だ。男だ。こんなものに心を奪われてる場合じゃ……ない」
だけど――脳裏に焼き付いていた。
鏡の中の“かわいい”自分の姿が。
それがほんの少し、嫌じゃなかったことが。
艦の服装規定は緩い。
外敵との戦闘が日常である以上、機能性が最優先されている。
それでも、補給室には女性士官用のインナーや軽装ワンピースが用意されていた。
「……着る必要なんて、ない。着たいなんて……思ってない」
それでも、何度もそこへ足が向く自分がいた。
服の質感。レースの縁取り。指先に引っかかる柔らかな感触。
「違うんだ……!」
言い訳のように呟く。
「これはホルモンのせいだ。俺がこんなものに惹かれるはずない……」
だが、その“否定”は、自分の欲望を明確に認識してしまっている証拠だった。
——女として綺麗でいたいと思ってしまう自分。
——男として、そういう気持ちを恥じてしまう自分。
ユウの心は今、二つに裂かれていた。
その夜、彼女は日誌にこう書いた。
『俺の中に、確かに“彼女”がいる。
だけど、俺はその彼女を認めたくない。
認めた瞬間、俺は“ユウ・カミシロ”じゃなくなってしまう気がするからだ。
……だけど、“彼女”の気持ちを無視するのは、もっと苦しい。』
彼女は服を着ない。
メイクもしない。
だが、その目には確かに“惹かれている自分”が映っていた。
いつかそれを許す日が来るのだろうか。
それとも、ずっと否定しながら生きていくのだろうか。
ユウはまだ知らない。
この葛藤の先に、“星の遺言”の核心が待っていることを――。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/23(水)00:10:34]
8:めるんめい
ID:MDhmNDE3i(8)
星の遺言・第七章:彼女のはじまり
補給室。
ユウは誰にも気づかれぬように、その部屋の扉を閉めた。
冷たい照明と静寂に包まれた空間に、一人。
ロッカーの奥にしまわれていた、それはあった。
柔らかく、白いシルエットのワンピース。機能素材でできていて、動きやすく、軍艦の中でも問題ないとされる“女性士官向け軽装”。
ユウの指先が、迷いなくそれを掴んだ。
...もっと見るただの興味だ。そう、自分に言い聞かせながら。
「……着るわけじゃない。ただ、ちょっと触ってみるだけ……」
だが、気づけば服のファスナーを下ろし、制服の上着を脱いでいた。
インナーの上から、そっと腕を通す。
左手、右手……
そして、胸元を合わせ、軽く腰のベルトを締める。
「……は?」
鏡に映った自分を見て、ユウの思考が止まった。
「え……なにこれ……」
想像以上に、似合っていた。
ぴったりだった。
胸の膨らみに自然に沿い、ウエストは軽くくびれて、裾は太ももまでの丈。
軽やかで、柔らかくて、どこか眩しい。
「ちょ、ちょっと待て……これは違う……っ!」
慌てて脱ごうとするが、手が震える。
指先が動かない。
鏡の中の自分が、あまりにも“綺麗”に見えてしまったから。
「……俺、女みたいじゃないか……」
当然だ。今の身体は女なのだから。
でも、“似合う”と感じたことが、何よりも怖かった。
「こんなの、俺じゃない……はずなのに……」
だが胸の奥に、確かにあった。
――この服、もっと前から着てみたかったかもしれない。
――誰かに「かわいい」って、言われたかったかもしれない。
“男に戻れなくなる”って、きっとこういうことなのだ。
身体がじゃない。
心のどこかが、“別の自分”に引き寄せられていく。
ユウは目を閉じた。
「でも……これが、俺の“今”なんだよな」
否定しても、もう知ってしまった。
自分の中には、“彼女”がいる。
着てしまった服と、心に芽生えた感情は、もう元には戻らない。
その日、ユウは制服に着替え直し、何事もなかったように艦橋へと戻った。
でも、歩くたびにふわりと揺れたあの裾の感触が、皮膚に残っていた。
彼は――彼女は――まだ、自分を“男”だと思っていた。
けれど、誰よりも強く感じていた。
もう、本当の意味で“どちらかだけ”ではいられないのだと。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/23(水)00:11:28]
9:めるんめい
ID:MDhmNDE3i(8)
星の遺言・第八章:取り戻せない声
「な……っ、なにこれ……っ」
艦長室のバスルーム。
鏡の前でバスローブを開いた瞬間、ユウの声が裏返った。
乳房は、また一段と大きくなっていた。
丸く、張り、肌のハリすら女そのもの。片手では収まらないほどの質量がそこにあった。
...もっと見る「俺は……こんなつもりじゃ……っ」
言葉が、どこか不自然に喉を滑っていった。
さっきから妙に柔らかい。自分の声が、少しずつ女の高さに変わってきているのだ。
「お、俺は……っ、こんな……ちがっ……私……? 違う、違う、“俺”だ……!」
言い直そうとすればするほど、“私”という言葉が自然に口から漏れてくる。
「ちくしょう……俺は男なんだ……ッ」
でもその瞬間、バスローブの隙間から零れ落ちた大きな胸が、自然と腕に収まり、
その柔らかさに、脳が痺れるような快感を覚えた。
「……あっ……」
情けない声が漏れた。
反射的に口を塞ぐ。
誰かに聞かれたら終わりだ。
艦長としての威厳も、男だった自分も、すべて――
けれど、ユウの心は、もう知ってしまっていた。
この身体の感触が、悪くないことを。
この柔らかな声が、誰よりも心地よいことを。
「……違うんだ……これはホルモンのせいで……」
そう言いながら、鏡に映る“自分”の表情が、どこか嬉しそうなのに気づいてしまった。
「うそ……だろ……」
頬がほんのり赤く染まり、瞳が潤み、長い睫毛が自然に色気を帯びる。
この顔で“私”と口にしても、何の違和感もない。
むしろ、それが本来の自分だったかのようにすら思えた。
「俺は……嬉しいのか……? 本当に……?」
問いは、誰にも届かない。
でも心の奥で、確かに声が囁いていた。
——ようこそ。“私”へ。
ユウは、唇を噛み締める。
それでも、ほんの少しだけ上がった口角は、もう“取り返せない”という現実を語っていた。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/23(水)00:11:53]
10:めるんめい
ID:MDhmNDE3i(8)
星の遺言・第九章:着られない日常
朝。
ユウは寝ぼけた頭でクローゼットを開け、いつものTシャツに手を伸ばした。
軍服じゃなくて、かつて地球時代に愛用していたグレーの一着。
「……やっぱこれが一番落ち着くよな」
そう言いながら、頭から被る。
が――
...もっと見る
「……う、ぐっ……あれっ……?」
胸が、引っかかった。
布が伸びない。
いや、伸びているが――明らかに限界を超えている。
「ちょっ……待って……」
布地が乳房に張り付き、パツパツの状態で止まった。
裾はウエストまで届かず、ボタンも何もないから伸びた分が戻ってくる。
「なんで……これ、普通に着てた服なのに……」
鏡を見る。
胸の膨らみがTシャツを無理やり持ち上げていて、
生地が乳首の位置にピタリと張りつき、輪郭まで浮かび上がる。
「う、うわ……っ、これじゃ外に出られない……!」
すぐさま脱ごうとするが、今度は胸に引っかかってなかなか脱げない。
「脱げないって何だよ……俺、こんなじゃなかっただろ……!」
やっとの思いで脱ぎ捨てたそのとき、ふと足元を見る。
引っ張り出したスニーカー――地球時代のもの。愛着のある黒。
片足を入れようとするが、入らない。
「は……? いや、違う、これは縮んだんだ、きっと……っ」
足は細くなっているはずなのに、甲が高く、指がつかえてつま先が入らない。
「まじかよ……俺の足じゃ、なくなってきてる……?」
服も、靴も、もう“今の自分”には合わない。
「……そんなはず、ないのに……」
その瞬間、体中にひやりとした実感が走った。
今までの“俺”が、少しずつ、消えていっている。
「服くらい……普通に着られると思ってたのに……」
声がかすれた。
だけど――
どこかでその“似合わなさ”に、納得している自分もいた。
「女物なら、着られるかもな……」
ふとよぎった考えに、自分で愕然とする。
だが、脳裏に浮かぶのは、あの白いワンピース。
そしてそのとき自分が感じた、“フィットする安心感”。
「俺、ほんとに……戻れなくなってるのか……?」
ユウは崩れるように床に座り込んだ。
脱ぎ捨てたTシャツは、今の自分には小さすぎた。
――変わっていくのは、身体だけじゃない。
日常が、記憶が、感覚までもが、“彼女”に合うように作り変えられていく。
それが怖いはずなのに、
胸の奥では、ほんの少しだけ、嬉しいと感じてしまった。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/23(水)00:12:59]
11:めるんめい
ID:MDhmNDE3i(8)
星の遺言・第十章:絶対に嫌だ
ピピッ、と警告音が鳴ったわけじゃない。
でも身体の奥から、はっきりと“それ”は来た。
「っ……ちょ、まじか……今かよ……」
尿意。
それは突然、でも確実に彼女を支配し始めた。
...もっと見る「いやだ……いやだ……こんなの、今の俺には無理だ……っ」
トイレに行くこと。
ただそれだけの行為が、今や“男”としての自分を終わらせる儀式のように思えた。
「違う……違うって……」
でも膀胱は容赦なく圧を強めてくる。
足を組んで耐える。体を丸めて息を止める。
けれど限界は、もうすぐそこだった。
「くそ……っ、なんでこんなことに……っ」
脱衣室に向かいながら、ユウの心はぐちゃぐちゃだった。
男だったときは、ただチャックを下ろして済ませるだけの話だった。
でも今の身体じゃ、そうはいかない。
個室に入って、服を脱いで、座って――
「絶対に無理だ……座るなんて……俺は……っ」
でも脚は勝手に動いていた。
扉のロックが自動で閉まる。
トイレの蓋を上げたその瞬間、ユウの中で何かが崩れた。
「やめろ……俺は……俺は男なんだぞ……!」
でもズボンと下着を下ろす手は止められなかった。
目をそらしたまま、そっと腰を下ろす。
冷たい便座に肌が触れる。
ただそれだけのことが、信じられないほどの敗北感だった。
「っ……あああ……っ」
音が響く。
女の身体で流れる尿の感覚は、明らかに違っていた。
角度も、流れ方も、音すらも……まるで“別人の行為”だった。
「なんで……俺が、こんな……」
膝に腕を抱え、顔を伏せる。
涙は流れなかった。
けれどその代わりに、心がきしむように軋んだ。
ただ、終わったあと。
ふと、洗浄機能が作動し、温風が肌に触れた瞬間――
「……悪く、ない……?」
その考えが、頭の奥にうっすらと浮かんだことに、自分自身でゾッとした。
――私、か。
――もう、戻れないのかもしれないな。
否定するたび、言葉が“私”に近づいていく。
変わっていくのが嫌だと叫びながら、
どこかでその変化を“受け入れていく心地よさ”に気づいてしまっていた。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/23(水)00:17:15]
12:めるんめい
ID:MDhmNDE3i(8)
星の遺言・第十一章:順応という裏切り
「また……だ」
ユウは艦内の廊下に立ち尽くしていた。
誰もいない時間を選んで移動していたのに、歩くたびに感じる腰の揺れや太腿を擦るスカートの感触に、もう驚かなくなっている自分に気づいた。
「おかしい……おかしいだろ……」
初めは違和感だった。
...もっと見る胸の重み。ヒップの揺れ。歩き方さえ、自然と女性的な動きになっていく。
何より、自分がそれを“直そう”としなくなっていることが、何よりも恐ろしかった。
「どうして……意識してたのに……俺は……“男”だったのに……!」
思わず壁に手をつく。
息が荒れる。
このまま変わっていく自分を止められないことへの、どうしようもない無力感が喉を締めつけた。
ふとした瞬間に“髪をかき上げる仕草”が自然に出ていた。
誰かの視線を感じたとき、思わず背筋を伸ばして“見られること”を意識していた。
「やめろ……そんなの……俺じゃない……!」
だが、内心で浮かんだ別の声があった。
……でも、悪くなかった。
見られている、と思うことに、どこか高揚する自分がいた。
「ちがっ……それは、違う……っ!」
呟いた声が、もう男のものではなかった。
高く、細く、どこか柔らかく――完全に“女性の声”。
そのことに気づいた瞬間、頭の奥で何かが崩れる音がした。
「……こんな声、いつの間に……俺……“私”なんて……!」
つい先日まで「私」と呼ぶことすら強烈な拒絶感があったのに、
今では“そう言わないと落ち着かない”ようになっている。
順応していく。
身体だけじゃない。
心も、言葉も、反応も、すべて“女性”としてのそれに染まっていく。
裏切っている気がした。
男だった自分に。
昔の自分に。
笑い合った仲間たちに。
「……ごめん……ごめんな……俺、もう……戻れないかもしれない……」
ユウは小さくつぶやいた。
涙はこぼれなかった。
けれどその代わりに、胸の奥が空洞になったようだった。
彼女は、立ち尽くしたまま、自分の指先を見つめた。
細く、柔らかくなったその手が、
いまや“元の自分”にはまったく馴染まないものになっていることに、静かに気づきながら。
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2025/04/23(水)00:18:52]
13:めるんめい
ID:MDhmNDE3i(8)
星の遺言・第十二章:思い出の影
鏡の前で立ち尽くしていた。
揺れるカールのかかった長い髪。
胸元で揺れる大きな存在感。
ウエストにそってぴったりとフィットするシャツ。
――そして、スカート。
「……まるで、あの頃の姉さんみたいだ」
...もっと見るふと、懐かしい記憶が蘇る。
ユウがまだ幼かったころ。
姉のマナは、いつもキラキラしていた。
ピンクのワンピースに白いヘアバンド。
笑うたびに耳飾りが揺れて、周囲の注目を一身に集めていた。
「マナ姉ちゃん、きれい……」
ぽつりと呟いた言葉に、マナは微笑んで頭を撫でてくれた。
「ユウも女の子だったら、いっしょにおしゃれできたのにね」
その言葉が、心に刺さった。
“女の子だったら”
本当はなりたかった。
でも、男として生まれたから。
マナはもう一度笑って、言った。
「でもユウは男なんだから、もっと男らしくしないと。
泣いたらダメ、スカートなんて興味持っちゃダメだよ?」
あのとき感じたのは――
怒られた悲しさじゃない。
“否定された”という静かな絶望だった。
「ずっと……そうしてきたんだ。
男らしく、強く、姉さんが望んだ通りに……」
でも、本当はずっと。
姉のように綺麗になりたかった。
スカートをはきたかった。
メイクを真似してみたかった。
声を柔らかくして、鏡の前で“かわいい”って言ってみたかった。
本来の“俺”は――
最初から、“私”になりたかったのではないのか?
「……こんな形じゃなくても……きっと、俺は――いや、“私は”」
声が震えた。
でも、胸の奥で何かがほどけていく感覚があった。
「マナ姉さん……もし、今の私を見たら、どう思うだろう……」
鏡に映った自分が、小さく笑った気がした。
それは、あのころの“なりたかった自分”に、
ほんの少しだけ近づいた気がしたからだった。
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2025/04/23(水)00:20:56]
14:めるんめい
ID:MDhmNDE3i(8)
星の遺言・第十三章:誰?って言わないで
艦を降り、久々に立った地上。
コロニー・セレネ。ユウの育った場所。
通信ではこう言っていた。
「久しぶりに帰るから」って。
姉は笑っていた。
あの頃と変わらない、あたたかな声で。
...もっと見る
でも――
目の前に立った姉マナの表情は、凍りついていた。
「……どちら様、ですか?」
その言葉に、ユウの心臓が音を立てて崩れた。
「……マナ姉……俺、だよ」
震える声でそう名乗った瞬間、姉の瞳に戦慄が走った。
「嘘……そんな……ユウは……男の子でしょ?
あなた、女の人じゃない……っ、誰かの、悪い冗談?」
その反応は当然だった。
今のユウの姿は、どう見ても“女”。
しなやかな腰のライン、圧倒的な胸元の膨らみ、
艶やかに流れる髪。
昔のユウを知る人間なら、誰もが戸惑う。
「ちがう……これは、仕方なかったんだ……。
俺は……“変えられて”しまった……けど……心は……!」
そう叫びながら、声も震えていた。
すでに自分でも“俺”という言葉が苦しくなり始めていた。
マナは一歩後ずさり、困惑と恐怖の入り混じった表情で、
まるで「本物の弟」を否定するかのように言った。
「ユウがこんなに綺麗な女の人になるわけない……。
あんたなんか、ユウじゃない……っ!」
綺麗、だと……?
その言葉に、胸がざわめいた。
喜んではいけない。
でも確かに“嬉しかった”。
「俺は……ユウだよ……姉さんがスカート着てたのを、
羨ましくて仕方なかった、あの頃から変わってない……!
今のこの身体が、俺を否定してるみたいで……怖いけど……
姉さんの前でだけは、俺でいたい……!」
叫ぶたびに、胸が揺れる。
涙が、頬を伝う。
でもその涙すら、どこか女性的で――
姉はそれを見て、さらに混乱した。
「そんなの……信じられない……っ」
静かに、マナは目を伏せた。
ユウは一歩、彼女に近づく。
そして震える声で言った。
「たとえ信じてくれなくても……
俺は、ずっと姉さんが憧れだった。
今こうなって……本当は……少しだけ、嬉しいって思ってる自分がいるんだ……
それが何より、怖いんだよ……」
その一言で、マナの肩がピクリと揺れた。
沈黙。
やがて彼女は、わずかに目を上げた。
「……少し、話を聞かせて。ユウ」
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2025/04/23(水)00:21:41]