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めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(
6)
星の遺言・第二章:影の航路(シャドウ・ルート)
〈アウロラ〉が“星の遺言”を追って未知の宙域へ進む中、艦内に緊迫した空気が漂っていた。ユウ・カミシロの決断により、連盟からの独立行動に出たことで、艦内では一部の士官たちの不満が膨らみ始めていた。
「艦長、暗号通信を傍受しました。内容は不明ですが、発信源は……艦内からです」
通信士のアレイナの報告に、艦橋はざわめいた。
「まさか……艦内にスパイが?」
...もっと見る副艦長ハレが顔をしかめた。「やはり、あの決断が早すぎたんだ。全員が貴方に従っているわけではない」
ユウは沈黙の後、言った。
「内部監査チームを結成しよう。だが……強制的な尋問はなしだ。疑心で艦を壊すわけにはいかない」
だが、艦長の理想はもろくも崩れた。
翌日、〈アウロラ〉のエネルギー中枢が何者かによって一時的にシャットダウンされ、AIヴェルナの意識が5分間遮断された。
「誰かが私を殺そうとしました」
艦内に響くヴェルナの声が震えていた。
その夜、主要幹部が緊急会議に集められた。士官たちは一様に険しい表情で睨み合っていた。
「犯人はこの中にいる」
ユウが静かに言ったその瞬間、緊張が爆発した。
「ふざけるな、俺じゃない!」「あんた、昨日ラボにいたろ!」「その言い訳、信じろってのか!」
船は次第に“仲間”ではなく、“容疑者”で満たされていった。
ユウは艦内ジャーナルにこう記した。
『人は真実よりも、誰を信じるかで壊れていく。だが、それでも信じることをやめた瞬間に、僕たちは人ではなくなる。』
そして――数日後、裏切り者は判明する。意外な人物だった。
通信士アレイナ。ユウが最も信頼を寄せていた若き才能。
「私は……裏切ってなんかいない。これは、真実を明かすための手段だったのよ……!」
彼女はヴェルナの記憶データを調査していたのだ。AIヴェルナ――彼女自身が、連盟によって植え込まれた「制御プログラム」の受信端末であり、いずれ〈アウロラ〉を“自壊”させるための存在だった。
ユウは言った。
「君は正しかった。でも方法が間違っていた。裏切りで真実を掴んでも、信じる者は残らない」
そして彼は艦の記録にこう記す。
『この艦は、もはや連盟の戦艦ではない。真実を追う、命と信念の航路だ。裏切りが生まれるのは、それだけ本当の正しさを誰も知らないからだ。ならば、僕たちで見つけよう。“正しさ”を。』
〈アウロラ〉は再び静かに、そして決意を秘めて航行を始める。
星の遺言の真実に向かって。
しかし、彼らが向かう先――“星の墓標宙域”には、さらなる罠と、古の存在が待ち受けていた。
[Safari/iOS18.3.2]
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2025/04/22(火)23:28:37]