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めるんめい
ID:Y2NiOTEyi(
6)
星の遺言(ユイゴン・オブ・ザ・スター)
— 宇宙歴2077年・銀河戦線記 —
宇宙歴2077年。人類はついに銀河系外への進出を果たし、「新銀河連盟(New Galactic Union)」を設立した。しかしその覇権を巡り、分離主義勢力「アルカ・ノクス」との間で長きに渡る星間戦争が続いていた。
宇宙戦艦〈アウロラ〉は、連盟最前線艦隊の中核を担う旗艦であり、戦局の鍵を握る人工知能「ヴェルナ」が統括する戦術艦でもあった。
その艦橋に、ひとりの若き艦長が立っていた。名はユウ・カミシロ、わずか27歳にして最年少で旗艦艦長に就任した異端の天才だった。
...もっと見る「敵艦隊、重力レーンより出現。距離4.2光秒。アルカ・ノクスの第七強襲艦隊です」
通信士の声に、ユウは冷静に応じた。
「艦隊を戦術フォーメーションG-03に移行。副艦長、AIヴェルナに指揮権を移譲して」
副艦長のハレは苦い顔をした。「またですか、艦長。AIへの依存は高すぎます。あれは機械ですよ」
「機械であろうが人間であろうが、勝つために最善を選ぶ。それが僕の流儀だ」
ヴェルナの声が艦内に響く。感情を模した女声だが、どこか冷たい。
「作戦開始。敵主力艦〈レクイエム〉に対して量子ミサイルを三連射、陽電子障壁を弱体化させます。成功率87.6%。随伴艦は陽動戦術を実行」
戦闘は熾烈を極めた。だが〈アウロラ〉の精密な戦術と、ユウの非凡な判断により、連盟艦隊は辛くも勝利を収める。
戦闘後、ユウは一人、ヴェルナとの対話室にいた。
「君の演算は素晴らしい。だが、ひとつだけ教えてくれ。なぜ毎回、最後の一撃を僕に判断させる?」
「艦長が“人間であること”の意味を問うからです。私は計算できますが、魂までは持てない。人間には“迷い”があります。それは戦術上の不確定要素ですが、時に運命を左右します」
ユウは黙った。彼の姉、カレン・カミシロは10年前、AIの誤判断により前線で命を落とした。その時以来、彼は「人とAIの共存」に固執してきたのだった。
だが、その静けさは突如として破られた。全銀河に向けて、アルカ・ノクスからの謎の電波が放たれたのだ。
「——我らは人類の過去より来たりし者。“星の遺言”を受け継ぎし者なり。連盟の歴史は偽り。真実は、地球から旅立つ前に抹消された——」
その映像には、かつての地球政府が極秘裏に行っていた“オメガ計画”の記録が映されていた。遺伝子改造、AIによる支配システム、そして一部の人類を「神」とする選別政策。
「まさか……連盟の礎がこんな狂気の上に……?」
ユウの頭の中で、価値観が音を立てて崩れ始めた。
ヴェルナが言った。
「艦長、我々が守ってきた“連盟”が偽りの希望ならば、貴方はどうしますか?」
ユウは苦悩の果てに答えた。
「……戦う。だが今度は、真実のためにだ」
彼は艦橋に戻り、全艦隊へ通信を送った。
「連盟艦隊全指揮官に告ぐ。これより我々は、真実を追う旅に出る。アルカ・ノクスとの一時停戦を提案し、“星の遺言”の正体を探る」
副艦長が呆然とする中、ユウは言った。
「時代は変わった。誰が正義かを決めるのは、もう組織でも国でもない。命そのものが、それを選ぶんだ」
こうして、〈アウロラ〉は星の海へと再び飛び立った。宇宙歴2077年、人類の命運を懸けた「真実の旅」が始まった。
だがその彼方にあるものが希望か絶望かは、まだ誰にもわからない――。
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2025/04/22(火)23:27:56]