14:
めるんめい
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8)
星の遺言・第十三章:誰?って言わないで
艦を降り、久々に立った地上。
コロニー・セレネ。ユウの育った場所。
通信ではこう言っていた。
「久しぶりに帰るから」って。
姉は笑っていた。
あの頃と変わらない、あたたかな声で。
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でも――
目の前に立った姉マナの表情は、凍りついていた。
「……どちら様、ですか?」
その言葉に、ユウの心臓が音を立てて崩れた。
「……マナ姉……俺、だよ」
震える声でそう名乗った瞬間、姉の瞳に戦慄が走った。
「嘘……そんな……ユウは……男の子でしょ?
あなた、女の人じゃない……っ、誰かの、悪い冗談?」
その反応は当然だった。
今のユウの姿は、どう見ても“女”。
しなやかな腰のライン、圧倒的な胸元の膨らみ、
艶やかに流れる髪。
昔のユウを知る人間なら、誰もが戸惑う。
「ちがう……これは、仕方なかったんだ……。
俺は……“変えられて”しまった……けど……心は……!」
そう叫びながら、声も震えていた。
すでに自分でも“俺”という言葉が苦しくなり始めていた。
マナは一歩後ずさり、困惑と恐怖の入り混じった表情で、
まるで「本物の弟」を否定するかのように言った。
「ユウがこんなに綺麗な女の人になるわけない……。
あんたなんか、ユウじゃない……っ!」
綺麗、だと……?
その言葉に、胸がざわめいた。
喜んではいけない。
でも確かに“嬉しかった”。
「俺は……ユウだよ……姉さんがスカート着てたのを、
羨ましくて仕方なかった、あの頃から変わってない……!
今のこの身体が、俺を否定してるみたいで……怖いけど……
姉さんの前でだけは、俺でいたい……!」
叫ぶたびに、胸が揺れる。
涙が、頬を伝う。
でもその涙すら、どこか女性的で――
姉はそれを見て、さらに混乱した。
「そんなの……信じられない……っ」
静かに、マナは目を伏せた。
ユウは一歩、彼女に近づく。
そして震える声で言った。
「たとえ信じてくれなくても……
俺は、ずっと姉さんが憧れだった。
今こうなって……本当は……少しだけ、嬉しいって思ってる自分がいるんだ……
それが何より、怖いんだよ……」
その一言で、マナの肩がピクリと揺れた。
沈黙。
やがて彼女は、わずかに目を上げた。
「……少し、話を聞かせて。ユウ」
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2025/04/23(水)00:21:41]