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めるんめい
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道頓堀の夜
阪神がクライマックスシリーズで横浜DeNAに四連敗を喫した夜、甲子園周辺の空気は異様に重かった。
試合終了の瞬間、球場の外にいた野良ゆっくりたちは、まだ事態を理解していなかった。いつものように「ゆっくりしていってね!あまあまちょうだいね!」と道行く人に声をかけていた。だが、その夜の阪神ファンは違った。
「お前らがおるから負けたんや!」という怒声が飛び、最初の一匹——れいむが蹴り飛ばされた。悲鳴を上げる間もなく、次々と野良ゆっくりが標的になっていく。甲子園の周りにいた数十匹のゆっくりは、まるで嵐に巻き込まれた落ち葉のように蹴散らされ、あるものは排水溝に押し込まれ、あるものは駐車場の隅で潰された。
「ゆっくり…ゆっくり…もっとゆっくりしたかった………」というか細い声が夜風に消えていった。
その噂は瞬く間に大阪中に広がり、道頓堀にも飛び火した。川沿いを歩いていた野良ゆっくりたちが、興奮したファンの群れに追いかけられる。道頓堀川に投げ込まれたゆっくりは「わあ、おそらをとんでるみたい!」と最後まで叫んでいたという。池に放り込まれた者、橋の上から放り投げられた者——川面には無数のゆっくりが浮かび、その光景はまるで異様な祭りのようだった。
そして、最も奇怪な出来事が起きた。
どこからともなく、一匹の3メートルはあろうかと見えるドスまりさが運ばれてきたのである。誰が持ち込んだのか、誰も知らない。ただ、噂を聞きつけた野次馬の一人が「これも投げろ」と叫び、ドスまりさは道頓堀川の真ん中に放り込まれた。ドスまりさは水面でしばらく浮かんでいたが、やがて「…もっとゆっくりしたかった」と呟いて沈んでいった。
翌朝、道頓堀川の水面はいつもと変わらなかった。しかし、川沿いの石畳には無数の小さな足跡が残され、ところどころに饅頭の欠片が散らばっていた。掃除のおばさんが呟く。「昨夜はなんか、賑やかやったなあ」
甲子園周辺でも、早朝の清掃員が小さな悲鳴を上げた。排水溝から「ゆっくり…」という声が聞こえた気がしたからだ。だが、蓋を開けてみると、そこには何もなかった。
ただ、その夜以降、道頓堀周辺では野良ゆっくりを見かけなくなったという。たまに現れるのは、なぜかドスを携えたまりさだけ。そしてそのまりさは、決まって川の方をじっと見つめているそうだ。
「あのよるのことは、ゆっくりおもいだしたくないよ」
そう語るのは、難を逃れた一匹の野良れいむ。甲子園の裏手にある段ボールハウスに隠れ住んでいる。
「でも、れいむはわすれないよ。あのよる、こうしえんのしみになったなかまたちのことを」
れいむはそう言って、静かに目を閉じた。
道頓堀川の水面に、今も時折、小さな波紋が広がる。甲子園球場の周りのアンコやクリームの染みにも誰も気に留めないが、それはきっと、あの夜のゆっくりたちの声なのかもしれない。
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2026/10/22(木)01:36:47]